金沢仏壇商工業協同組合

金沢仏壇の歴史

信仰と文化に育まれた金沢仏壇

金沢仏壇の発展には、浄土真宗の広まりと加賀百万石の文化が大きく関わっています。
文明3年(1471)蓮如上人が北陸を巡化し、各地に道場を築いたことで、信仰と共に仏壇の需要が生まれました。
江戸時代には幕府の宗門制度により。各家庭に仏壇を供えることが義務づけられ、金沢を中心に需要が一層高まります。
こうした背景に加え、漆や金箔といった豊富な原材料、そして加賀藩が育んだ工芸文化により、荘厳華麗な金沢仏壇が生み出されて行きました。

細工所の流れを汲む伝統の技術

金沢仏壇の特徴が、室町文化の伝統を受け継いだ高度な技法によって作られることあるといわれるのは、藩営の細工所と深いつながりを持ちます。
細工所は加賀藩主前田家が学芸美術奨励策の一環として江戸･京都から室町文化を受け継ぐ名工を招き一カ所に集めたもので、藩主調度品や将軍家･公家･諸侯への進物などを作成していたのです。
この細工所の流れをくむ職人が、後に木地師･塗師･蒔絵師･金具師･などとなって一般庶民の需要にこたえて仏壇を正確したと伝えられているのです。

金沢仏壇は、昭和51年に国の伝統工芸品として指定されたことを機に、業界は一致協力して品質の向上･後継者の育成･販路の拡大などに精進しています。

受け継がれる伝統と七職の匠の技

金沢仏壇は、国の｢伝統的工芸品｣に指定された、日本を代表する総合工芸です。
その制作は古くから分業制で行われ、木地･宮殿･塗り･蒔絵･箔彫り･木地彫り･金具の7職がそれぞれ専門の技を担い、互いに連携することで完成します。
この分業は効率のためだけではなく、各職人が自らの工程に専念し、世代を超えて技を高め続ける仕組みでもあります。
精緻な彫刻や塗り、蒔絵など、あらゆる部分に戦痕技術の粋が込められています。

工程を担うのは経済産業省認定の伝統工芸士をはじめとする熟練の職人たちで、確かな技と誇りが金沢仏壇の品質を支えています。

信仰と文化に根ざした歴史、7職の分業による高度な技、そして伝統工芸士の手仕事。
これらが結び合い、豪華で気品ある金沢仏壇は今日も人々の祈りを支え続けています。

金沢仏壇の七職について

金沢仏壇の特徴

木地には耐久性を最優先し、骨組みにはアオモリヒバ（クサマキ）などを、板材にはイチョウを主に用いています。これらの材は湿度変化に強く、長い年月にわたり安定して使用できる点が特長です。そのため、末永く安心してお使いいただける仕上がりとなっております。
各部はほぞ組みによって組み上げられているため、非常に堅牢な構造となっています。この構造により、部品ごとの分解が可能で、加工や加飾の工程を丁寧に進められるほか、後日の修理・洗浄の際にも大変扱いやすく、確実な作業が行えます。
上戸および障子の取り付け基点は、多くが回転軸として機能しており、外側へ開く構造になっています。上戸はすべて帯・輪入りの仕様で、障子については上・中・下の腰輪入りが基本です（上腰輪を省略する場合もあります）。
宮殿自体に十分な高さがあるため、上屋根の上部までその全体像をはっきりと見渡すことができます。組み物については、下屋根には五重桝組（四重の場合もあり）を用い、上屋根には二重から三重の組み物を組み上げ、組み物地板に設けた穴へ差し込む構造となっています。これらの重層的な桝組が、宮殿の力強い意匠と安定性を支える大きな特徴となっています。
塗り加工では、主要部分の下地に漆を用いた錆下地を施し、中塗りはほぼ全体に行います。上塗りにはすべて天然漆を使用し、見付板・左右の横板・戸板などは呂色仕上げとしています。上戸表は紅透塗の呂色仕上げとし、さらに各輪類には錆紐を引いて仕上げるのが特徴です。
金沢仏壇の最大の特徴は、前柱・段縁・中柱・風呂の戸・引き出し・ハなど、細部に至るまで広範囲に蒔絵を施している点にあります。蒔絵仏壇としての魅力を最大限に引き出す構成となっており、さらにその技術水準は極めて高いものです。施す蒔絵は主に「磨き蒔絵」「高蒔絵」が中心で、全体として落ち着きのある上品な美しさを備えています。また、これらの蒔絵は永久的に変色せず、拭いても禿げることがないという優れた耐久性も大きな特長です。
彫刻を施す部分のうち、障子の上腰・中腰・下腰、そして前指については、塗り加工や箔押しを行わず、木肌そのものを生かした木地彫としています。この素地仕上げが、仏壇全体にほどよい渋みと上品さを与えています。さらに、彫刻技法は積み重ね式ではなく、一切の接着剤を使用せずに一枚板から彫り上げるのが特徴です。この高度な技術によって、力強さと繊細さを併せ持つ美しい仕上がりが実現されています。
障子金具には枝文様を施し、外周の輪郭などには面取りを行っています。素材は通常、銅合金や銅板を加工したものを用いますが、上位品では銀製の金具を使用することが多く、より気品のある仕上がりとなります。
金箔は金沢が全国有数の主産地であるため、品質の選定において特に有利な環境が整っています。
障子の組子には紗を張りますが、通常は本紗生地に金色の糸で刺繍を施したものを用います。図柄は、唐草模様または散り蓮華が一般的です。